ヘルニアとは
体内のある臓器が本来あるべき位置からはみ出してしまった状態のことを総称として「ヘルニア」と呼びます。
身近によく聞く「でべそ」は、生後間もなくへその緒が取れた後に、おへそがとびだしてくる状態で、臍(さい)ヘルニアと言います。
ヘルニアの種類
身体の部位によって様々なヘルニア疾患があります。
頭部
・脳ヘルニア
頭蓋内に血腫や脳浮腫が生じると、頭蓋内の圧が高まり脳が押し出される状態を脳ヘルニアといいます。押し出された脳に脳幹が圧迫され呼吸や心臓の機能を損ないます。
初期症状は意識障害と瞳孔の異常で、時間が経過すると呼吸が不規則になり、更には呼吸停止の状態に陥ります。
頸部
・頸椎椎間板ヘルニア(※JHCコンシェル対象)
首には7個(C1~7)の椎体という骨と、その骨と骨とつなぐクッションのような柔らかい組織(椎間板)があります。周囲には繊維輪という比較的しっかりとした繊維性組織で包まれています。この椎間板の繊維輪に亀裂が入ると椎間板内の奥にある髄核が、外に出てきてしまいます。これを頸椎椎間板ヘルニアと言います。
脊髄症(歩行障害や細かい手作業が困難になる)や神経根症(片側だけの上肢の痛みやしびれ、筋力低下)の症状に陥ります。
胸部
・胸椎椎間板ヘルニア
胸椎(T1~12)にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしている椎間板が、老化や強い衝撃などで線維輪がふくらんだり、線維輪に亀裂が生じて髄核が外にはみ出してきてしまいます。これを胸椎椎間板ヘルニアと言います。
肋骨に沿って電気が走るような激痛がおこる(肋間神経痛)、足のしびれや痛みなど。
腹部
・大腿(だいたい)ヘルニア
鼠径靭帯の直下で大腿動静脈が通過する大腿輪をヘルニア門とするヘルニアです。
高齢の痩せた女性に多く、ヘルニア門の四方が強固な組織であるため、発症すると非還納性となりやすいことが特徴です。
嵌頓(かんとん)しやすいため、重篤なリスクがない限り手術適応です。
・鼠径(そけい)ヘルニア
解剖学的に下肢のつけ根を鼠径部と呼び、複数の筋膜や腱膜が重なって壁を構成し、腹圧に対する抵抗力を保っています。
鼠径部には鼠径管と呼ばれる構造があり、神経や血管の他に男性では輸精管と精巣動静脈、女性では子宮円靭帯が通過します。
鼠径管後壁(横筋筋膜と腹横筋腱膜)が、脆弱になることで発症するヘルニアが鼠径ヘルニアです。
・腹壁(ふくへき)ヘルニア
腹部手術創直下の筋膜が腹圧に対して脆弱となることで発症するヘルニアです。
多くの場足、手術創に一致した皮膚の膨隆で発症します。
・臍(さい)ヘルニア
腹壁が弱くなってしまった臍部から腹腔内の腸管が脱出した状態を臍ヘルニアと言います。
臍のふくらみが大きくなり、痛みなどの症状を伴うようになり、ふくらみがもとに戻らなくなり痛みや吐き気を伴うことがあります。
放置すると嵌頓(かんとん)といって脱出した臓器がもとに戻らなくなり、壊死してしまい緊急手術が必要となる状態になる場合があります。
・閉鎖孔(へいさこう)ヘルニア
骨盤を構成する坐骨と恥骨で形成される閉鎖孔をヘルニア門とするヘルニアで、痩せた高齢女性に好発します。閉鎖神経圧迫症状である下肢痛や股関節痛を訴えることが多く、嵌頓しやすいためヘルニア内容が腸管の場合は腸閉塞で発症することがあります。
近年、これらの症状に対するスクリーニングCTで発見される機会が増えており、重篤なリスクがない限り手術適応です。
腰部
・腰椎椎間板ヘルニア(※JHCコンシェル対象)
腰椎(L1~L5)にかかる衝撃を吸収するクッションの役割を果たしている椎間板に負担がかかり、椎間板内部にある髄核という組織が外に飛び出して神経にぶつかった状態が椎間板ヘルニアです。
身体の悩みランキングで上位にあたる腰痛の原因でもあります。
神経がダメージを受けると腰痛の他にも足の痛みやしびれ、動かし難いといった症状が出現し、重症化すると感覚障害や筋肉麻痺、排尿障害を引き起こす場合もあります。